ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョージョー・T・ギッブス、クレメンス・スキック、クリストファー・デナム、マリサ・ベレンソン
ある夜、警察に止められた一台のトラック。
運転席には負傷し、女装をした男性。荷台には数十匹の犬。
”ドッグマン”と呼ばれるその男は、半生について語り始めた。
犬小屋で育てられ暴力がすべてだった少年時代。犬たちの愛に何度も助けられた男は、絶望的な人生を受け入れて生きていくため、犯罪に手を染めてゆくが、”死刑執行人”と呼ばれるギャングに目を付けられー。
感想(ネタバレ含む)
ダグラス役を演じた、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技が素晴らしく、ケイレブありきの映画だと思いました。ケイレブファンが増えそうです。
警察に捕まったダグラスが、精神科医師のエヴァリンに、少年時代からこれまでのことを話し始めます。これ以降は、回想シーンを織り交ぜながら進行していきます。
闘犬で生計を立てる父親に、虐待され犬小屋で育ちます。犬たちと過ごし絆を深めてきました。しかし、父親に拳銃で撃たれ下半身不随となります。
散々な目に遭っていますが、復讐しやり返しています。自分を捨てた母親には復讐しなかったのですが、これは母親も、父親の暴力の犠牲者だったからでしょう。
マイノリティな方たちには、常に優しいのです。
施設に保護されたダグラスは、演劇好きの女性サルマと出会います。そして、サルマに恋します。数年後、舞台で活躍するサルマに会いにゆきますが、すでに結婚していて失恋の痛みを知ります。
この時のことを、エヴァリンに自虐的に話します。「あのとき自分が間抜けに思えた。哀れみ以外のものを彼女に期待したなんて」このシーンの演技がとても好きです。
ダグラスにとってサルマは、初めてまともに接してくれた人間でした。サルマに惹かれるのは無理もありません。そして彼女とは、あまりにも世界が違い過ぎていたことを思い知らされるのです。
人間によって、裏切られ傷つけられてきたダグラスを、支え守り慰めてくれたのは、いつも犬たちでした。犬は裏切ることなく、愛し続けてくれる唯一の存在。
「信じられるものは犬だけ、愛してくれるのも犬だけ。」過酷な少年時代から、弱者に厳しい社会を生き抜いてこられたのは、犬たちの愛があったから。
最後は、犬たちの誘導によって檻から出たダグラスが、車いすから降り、教会に向かって歩きだします。(脊髄に刺さった銃弾のせいで、歩くたびに髄液が漏れる危険性があるため、歩くことを禁じられていました。)そして、叫びながら仰向けに倒れます。
「私は神を信じているけど、神は私を信じてくれているのだろうか」
自分の足で立った。後悔しても構わない。神に委ねず、人生は自分の意志で決める。
それがダグラスの出した答えなのかなと思いました。
ー 後悔なんて何もない♫いいことも悪いこともすべて同じ♪すべて償った清算した♫忘れた♪過去などどうでもいい♪ ー
エディット・ピアフ「Non,je ne regrette rien(水に流して)」の曲が優しく流れます。